中国においても、著作権は、作品の創作が完成した日より発生するとされています。
したがって、著作権の取得において、登録手続きを行うことを要件とはしていません。
ただし、任意の著作権登録制度が設けられていて、この著作権登録の際に発行される、「著作権登記証書」は、著作物の帰属や創作時間を証明する初歩的な証拠となりますので、権利行使の際などには、有効に利用できる場合があります。
今回は、中国における著作権制度及び著作権登録の活用方法についてご紹介します。
中国における著作権の基本的な概要
著作権法上の作品
文学、芸術、科学分野で独創性があり、一定の形で表現できる知的成果
- 文字作品
- 口述作品
- 音楽、演劇、曲芸、ダンス、曲芸芸術作品
- 美術、建築作品
- 写真作品
- 視聴覚作品
- 工程設計図、製品設計図、地図、見取り図などの図形作品と模型作品
- コンピュータソフトウェア
- 作品の特徴に合致するその他の知的成果
著作権者及び権利
1.著作権者
著作者、その他の法律により著作権を有する自然人、法人又は非法人組織
2.権利
- 人格権(4種類)
公表権、署名権、修正権、作品完全性保護権 - 財産権
複製権、発行権、貸与権、展示権、実演権、上映権、放送権、情報ネットワーク伝達権、撮影製作権、翻案権、翻訳権、編集権、その他
著作権の保護期間
1.署名権、修正権、作品完全性保護権
保護期間の制限はなし
2.公表権及び財産権
- 自然人
公表権及び財産権は、通常著作者の生涯及びその死亡後50年 - 法人又は非法人組織
公表権は、50年
財産権は、通常最初に公表してから50年
著作権法で保護される作品の構成要件
- 人間の知的成果
- 文学、芸術、科学分野に属する感情表現
- 一定の形で表現(言語、芸術、科学符号等)
- 独創性
中国における著作権登録の活用
1、著作権侵害
著作権登録ならびに、発行される「著作権登記証書」は、著作権侵害が発生した際に、自らがその著作物の著作権者であることと創作時間を証明する重要な証拠とすることができます。著作権侵害訴訟を提起したり、行政当局に行政処罰を求める際に利用することができます。
活用事例:
- ECサイトへのクレーム
- 中国行政機関への行政取締りの申し立て
- 税関登録
- 著作権集団管理組織による権利行使
- 著作権侵害訴訟 など
2、先行権利として活用
後願の商標登録出願に対抗可能
中国商標法第32条では、以下のように規定されています。
「商標登録出願は他人の既存の先行権利を損害してはならない」
この中の「既存の先行権利」には、係争商標の出願日前に創作された著作権も含まれるので、この規定を根拠として、後願の商標登録出願に対して、異議申立や無効審判を提起することができます。
先行権利であることを主張するためには、著作権に基づいて、以下の2点の証拠が必要です。
- 著作権取得関連書類 (著作権作品(ロゴ)に関する創作書類、中国や日本や他の国における著作権登記証書の写しなど)
- 類似商品や役務における使用証拠
ただし、引用商標の無効審判等に対抗できるかについては、著作権登録があれば、ほかの証拠に加えてプラスの材料とはなりますが、それだけで対抗できるわけではなく、引用商標出願日前の関連する創作資料や使用実績など、さまざまな証拠が必要です。
このあたりについては、詳細な証拠や情報を以って具体的に分析する必要があります。