北京市高級人民法院が公布した懲罰的賠償が適用された知的財産権代表的事件

2023/02/01
2023/03/23

今回は、北京市高級人民法院が2022年に公布した、「知的財産権侵害訴訟において懲罰的賠償が適用された代表的事例を紹介します。

「百度」商標権侵害及び不正競争紛争事件

本件は、馳名商標を異なる区分の商品・役務に使用した権利侵害事件で、規範的に懲罰的賠償計算を行った典型的な事件です。懲罰的賠償の適用において、賠償総額=基数+基数と倍数との積としました。

【基本情報】
事件番号: (2019)京73民初1335号、(2022)京民終170号
原告:百度在線网絡技術(北京)有限公司
(百度オンラインネットワーク技術(北京)有限公司)
被告:北京京百度飲食管理有限公司、北京京百度飲食管理有限公司第三支社、北京京百度飲食管理有限公司第八支社

【主な事件概要】
原告:百度在線网絡技術(北京)有限公司
ネット検索エンジンサービスを運営している中国企業で、2000年3月16日に第42類「コンピュータ情報ネットワーク方式でコンピュータ情報を提供する」などの役務上で「百度」商標を登録出願しました。
「百度」商標はインターネット検索分野で高い知名度を有しています。
被告:北京京百度飲食管理有限公司及び第三支社、第八支社

北京京百度飲食管理有限公司(以下、京百度社)は2012年1月に設立され、その後、飲食サービス、飲食管理などを含む第三子会社、第八子会社などの子会社を次々と設立しました。

京百度飲料社とその子会社は、経営敷地内の店舗の求人、看板、飲料庫、メニュー、宣伝広告、箸の包装、ティッシュ箱、レシート、ライトなどで、「百度」及び「百度」の文字を含む表示を強調して使用し、wechatの公式アカウントや中国で有名なデリバリーアプリ「美団アプリ」でもその表示を使用していました。

百度社は、自社の「百度」商標が馳名商標を構成しており、京百度社とその子会社がその商標権を侵害しているとして、京百度社とその子会社に権利侵害の停止と影響の解消、ならびに懲罰的賠償を適用し権利侵害利得の3倍となる賠償額495万元(日本円約9900万円)と合理的支出5万元(日本円約100万円)の支払いを命じる判決を要求しました。

【一審裁判所の判断】
被疑侵害行為が発生した時点で百度社の「百度」商標が中国国内において馳名商標であったことを証明できる証拠があって、京百度社とその子会社が経営活動において「百度」関連標識を強調して使用することは百度社の商標権侵害となるとし、百度社の主張する懲罰的賠償請求を支持しました。

—-賠償額の確定方法—-
京百度社とその子会社が提出した被疑侵害行為に関連する2016年10月-2019年9月の間の損益計算書などの財務資料を参考に、以下のとおり賠償額を決定しました。

■営業利益総額926 710.61元、年間平均営業利益額308 903.54元
■被疑侵害行為の持続期間5.25年
■「百度」商標の顕著性と知名度、被疑侵害行為の具体的な情状などの要素を考慮し、権利侵害利得に対する「百度」商標の寄与率を35%とする。

以上を踏まえ、権利侵害の主観的過失の程度、権利侵害行為の持続期間、権利侵害利得及び百度社に与えた損害などの要素を総合的に考慮して、懲罰的賠償額を3倍で計算し、
(計算式は、308 903.54元×5.25年×35%×(1+3)=2 2704 41元)
京百度社とその子会社に百度社の経済損失2,270,441元(日本円約4300万円)を賠償するよう命じる判決を下しました。

【代表的な事件としての意義】
本件は規範的に懲罰的賠償計算を行った典型的な事件です。
計算式は、(基数+基数と倍数との積)であり、具体的な考え方は以下のとおりです。

1)基数を決定する
①まず基数の決定方法を確定します。
本件では百度社の要求に応じて権利侵害利得に基づいて基数を計算しました。権利侵害利得は権利侵害者の営業利益に基づいて計算することができます。
②次に知的財産権の貢献度を考慮します。
権利侵害利得に基づいて基数を決定する際、事件の具体的状況に応じて、権利者の知的財産権の商業価値に対する貢献度または割合を適切に考慮し、知的財産権の貢献度を合理的に決定する必要があります。

2)懲罰的賠償の倍数を決定する
法律では懲罰的賠償の倍数範囲が規定されていますが、具体的な事件においては、権利侵害者の主観的故意の程度、権利侵害の重さなどの要素を結び付けて確定する必要があります。
懲罰的賠償の適用においては、法に基づく適用、積極的で慎重の原則を重視し、賠償基数の相対的正確性、倍数の合理性を重視する必要があります。

「新華字典」商標権侵害事件及び不正競争紛争事件

 本件は懲罰的賠償の適用において、権利者の未登録商標の知名度の観点から権利侵害の故意を判断した典型的な事件です。

【基本情報】
事件番号: (2016)京73民初277号
原告: 商務印書館有限公司
被告: 華語教育出版社有限責任公司

【事件概要】
・「新華字典」は中国初の現代中国語字典で、商務印書館有限公司(以下、商務印書館という)が1957年に第1版を出版し、2016年までに第11版まで出版されています。
・2010年から2015年にかけて、「新華字典」の字典類図書市場での平均占有率は50%を超え、2016年の世界発行部数は5億6700万部を超え、「最も人気のある字典」、「最も売れた本(定期改訂)」として、ギネスブックに載るなど数多く表彰されました。

商務印書館は華語教育出版社有限責任公司(以下、華語出版社という)が「新華字典」辞書を出版・発行していることを発見し、華語出版社がその「新華字典」の未登録馳名商標を侵害していると主張し、華語出版社に直ちに権利侵害を停止させ、経済損失300万元を賠償するよう求めました。

【一審裁判所の判断】
・「新華字典」は商品の出所を表す意味と役割を持ち、商標の顕著な特徴を備えている。
・「新華字典」はこの60年の間に全国規模で数億冊を販売しており、さらに販売範囲も非常に広く、関係公衆に知られており、未登録の馳名商標を構成している。

華語出版社が「新華字典」を複製・模倣する行為は混同を招きやすく、権利侵害となるため、華語出版社は直ちに権利侵害を停止し、懲罰的賠償を適用して賠償額を計算する判決をくだしました。

—-賠償額の確定方法—-
北京市新聞出版広電局に届出た権利侵害字典印刷依頼書の情報統計数量の一部を参考に、以下のとおり賠償額を決定しました。

■字典定価の総額20 ,310 ,160元
■2014年に中国大陸で上場した出版企業の年間平均純資産利回り11.29%

華語出版社の権利侵害行為の性質と主観的故意を総合的に考慮し、上記方法で確定した金額の1.5倍で計算した賠償額が商務印書館の賠償請求額である300万元を超えていたため、一審は商務印書館の賠償請求を全額支持するとしました。

【代表的な事件としての意義】
本件は懲罰的賠償の適用において、権利者の商標知名度の観点から権利侵害の故意を判断した典型的な事件です。懲罰的賠償の適用に繫る故意とは、主に、権利侵害者が自身の行為が他人の知的財産権を侵害することを明らかに知りながら、他人の知的財産権を侵害する行為を実施している主観的状態をいいます。

本件訴訟までの間、商務印書館は「新華字典」を60年間出版し続けており、当該字典は世界的に発行され、権威と影響力のある栄誉を数多く得ていました。商務印書館は「新華字典」を商標として登録していませんでしたが、数十年にわたって宣伝と使用を続けたことにより、辞書分野において未登録の馳名商標となっていることが明らかになりました。

華語出版社は商務印書館の同業他社として、「新華字典」の顕著性と知名度を知っているべきですが、「新華字典」の辞書を出版・発行しており、明らかに権利侵害において故意があります。

「FILA」商標権侵害及び不正競争紛争事件

本件は懲罰的賠償の適用において、権利侵害者による係争商標と近似する商標の登録過程で、権利者によって異議申し立てが行われたにも関わらず、権利侵害者が権利侵害行為を実施し、侵害が故意にあたると判断された代表的な事件です。

【基本情報】
事件番号: (2017)京73民終1991号、(2017)京0102民初2431号
原告:斐楽体育有限公司(FILA)※斐楽は中国語で「FILA」を指します。
被告:浙江中遠鞋業有限公司、温州独特電子商務有限公司、劉氏など

【事件概要】
・2008年、斐楽体育有限公司(以下、FILA社という)はライセンスを受けて「FILA」シリーズの登録商標の中国地域での唯一の合法的使用権を取得しました。この「FILA」シリーズの登録商標は中国内外で高い知名度を持っています。
・2016年6月、FILA社は浙江中遠鞋業有限公司(以下、中遠靴業社という)がインターネット及び実体店で、温州独特電子商務有限公司(以下、独特電子社という)がJingDongなどのオンライン販売プラットフォームで「杰飞乐フラッグショップ」、「杰飞乐公式フラッグショップ」を開設し、その展示、販売している靴類の商品が、FILA社が保有する「FILA」シリーズの登録商標に近似する標識(下記商標1、商標2)を使用していることを発見しました。

※注:独特電子社の「杰飞乐フラッグショップ」における「飞乐」は中国語で「fēilè」と発音し、「FILA」と「斐楽」(FILAの中国語名称)を連想させます。

被告の一人である劉氏は中遠靴業社の元法定代表者、独特電子社の法定代表者、「GFLA杰飞乐」などの商標登録者として、上記の生産や販売、宣伝行為に参与しており、 FILA社は三被告に対して権利侵害の停止、経済損失900万元の賠償、合理的な支出41万元の判決を求めました。

原告の登録商標

商標4

 被告の商標
商標1

商標2

商標3

【一審裁判所の判断】
・中遠靴業社、独特電子社が被疑侵害商品上に「商標1」の標識を使用しかつ「飛樂(中國)」と表示すること、及び、ウェブサイトで「商標1」、「商標2」の標識を使用することは、FILA社の「FILA」シリーズの商標が享受している商標権の侵害にあたると判断しました。

主な判断内容は次の通りです。

・三被告は同類商品の事業者として、FILA社の商標の知名度を把握しているはずで、生産した商品にその商標に近似する標識を強調して使用し、複数のインターネットプラットフォームで販売をしており、その販売額も膨大である。
・中国商標局は2010年7月19日に、第7682295号「商標3(上記写真参照)」の商標がFILA社の第G691003A号「商標4(上記写真参照)」の商標と近似していることを理由に、当該商標の「服装、帽子、靴」への登録出願を却下しており、三被告はこの時点ですでにFILA社が先に登録したFILAシリーズの商標を十分に把握しており、被疑侵害標識を使用すれば、商品の出所が混同し、誤認される可能性があることを明らかに知りながら、権利侵害商品の生産と販売を続けた。

・主観的悪意があることは明らかで、権利侵害の情状が深刻で処罰的賠償を適用すべきである。

—-賠償額の確定方法—-

■中遠靴業社は3つのブランドを有するが、各ブランドの販売量と利益状況を証明する証拠が提供されていないことを考慮し、被疑侵害商品の営業利益が占める割合を1/3と推定する。
■これに基づくと、中遠靴業社の2015、2016年度の権利侵害による営業利益は2,638,322元であり、3倍の賠償額を791万元として判決を下す。

【代表的な事件としての意義】
本件は懲罰的賠償の適用において、権利侵害者が商標登録過程で権利者の商標権を把握していたにも関わらず権利侵害行為を実施し、侵害が故意にあたると判断された代表的な事件です。

被告が登録出願した商標が、先願商標と近似を構成していると権利者に異議を申し立てられて却下されたにも関らず、却下された商標を使用した靴類の商品を生産販売しており、この行為は明らかに故意の権利侵害にあたります。

訴訟において、権利者は権利侵害者の権利侵害が故意である主観的状態に対して相応の証拠を提出する必要があり、主に以下の2点を証明する必要があります。

(一)権利侵害者が権利者の知的財産権の存在を明らかに知っている
登録商標などの知的財産権は公示性がありますが、商標が登録されているという事実だけでは、関連する知的財産権の存在を他人が明らかに知っていると認定するには不十分です。商標の登録過程を経ていることは、権利侵害者が他人の先の商標権を明らかに知っている状況であります。

(二)権利侵害者がその実施行為が権利者の知的財産権を侵害することを明らかに知っている
権利侵害者がその権利侵害行為を明確に認識できる場合にのみ、侵害の故意があると認定することができます。商標登録過程で却下されてもなお、その商標を使用している行為は明らかに権利侵害であると認識していると証明することができます。

ジョンディア(约翰迪尔)商標権侵害と不正競争紛争事件

本件は、権利侵害商品を販売して行政機関に処罰された後も、権利侵害を継続し利益を得ていたことで、権利侵害が故意で情状が深刻と判断され、懲罰的賠償が適用された事例です。

【基本情報】
事件番号: (2016)京73民初93号、(2017)京民終413号
原告: 迪爾公司(ディア・アンド・カンパニー)、
約翰迪爾(中国)投資有限公司(ジョンディア(中国)投資有限公司)
被告:  約翰迪爾(北京)農業機械有限公司(ジョンディア(北京)農業機械有限公司)約翰迪爾(丹東)石油化工有限公司(ジョンディア(丹東)石油化学工業有限公司)
蘭西佳聯迪爾油脂化学工業有限公司

【事件概要】
・ディア・アンド・カンパニーは1837年に設立された世界的に有名な農業機械及びエンジニアリング・林業設備メーカーで、1976年に中国に参入し、2000年にジョンディア(中国)投資有限公司(以下、ジョンディア中国社)を設立しました。

・ディア・アンド・カンパニーは「JOHN DEERE」「约翰.迪尔」などのシリーズ商標を保有しており、その商標を非独占的にジョンディア(中国)社にライセンスしていました。

二原告は、三被告がディア・アンド・カンパニーの登録商標と同一または近似の標識が付された工業用オイルなどの商品を中国で生産、販売し、工業用オイルなどの商品上で「佳聯迪尔」商標を登録し、企業の屋号を「佳聯迪尔」「约翰迪尔」などと登記していることを発見しました。

二原告は権利侵害利得の3倍を懲罰的賠償額とし、三被告に経済的損失500万元などを連帯して賠償するよう求めました。

【一審裁判所の判断】
・三被告が共同で二原告の商標権を侵害したと考える。

—-賠償額の確定方法—-
■三被告は、同一または類似の商品に係争商標を使用するだけでなく、ドメイン名登録、企業屋号登録などにも係争商標を使用し、商標登録などの方法により、係争商標を複製、模倣、翻訳し、実施した権利侵害行為が多様である。
■三被告は、遼寧省、黒龍江省、新疆、北京に販売ネットワークがあり、権利侵害利得が大きく、提出された証拠から推定して、二年間の権利侵害売上額は1600万元を超えている。
■行政処罰後も権利侵害行為を継続して実施し、主観的悪意が明らかで、かつ権利侵害の情状が深刻である。
■権利侵害利得については、差し押さえられた権利侵害商品の数、関連する行政処罰に繫る権利侵害商品の月間販売額、商標権無効審判で提示された権利侵害商品の月間販売額、二被告の平均販売単価、関連商品の業界平均利益率などの指標を参考に計算する。

上記方法で確定した金額の3倍は、二原告が主張する賠償額500万元をはるかに上回るため、 一審は二原告の賠償請求を全額支持するとしました。

【代表的な事件としての意義】
本件は懲罰的賠償の適用において権利侵害の故意があり、かつ情状が深刻な状況が存在する代表的な事件です。

権利侵害が故意であることや情状が深刻であることを表す形式は多様で、侵害行為によって反映される権利侵害者の主観的状態や客観的表現には異なる部分があり、密接な関係もあり、一部の情状は主客観2つを同時に反映することもあります。

本件において、被告は権利侵害商品を販売して行政機関に処罰された後も、権利侵害による利益に動かされ、同様の権利侵害行為を実施していました。

被告の継続的な権利侵害行為は、実施行為に対する権利侵害の性質が「明らかに知っている」だけでなく、行政処罰を無視して権利侵害を継続しており、権利侵害が故意であることと情状が深刻であることの2つの要件を備えているため、懲罰的賠償の適用要件を満たしています。

鄂尔多斯(オルドス)商標権侵害紛争事件

本件は、相対的に正確に懲罰的賠償の基数を確定した代表的な事例です。懲罰的賠償の基数を、懲罰的賠償の基数=販売数量×平均単価×知的財産権貢献度としました。

事件番号: (2015)京知民初字第1677号
原告:内蒙古鄂尔多斯资源股份有限公司(内モンゴルオルドス資源股份有限公司)
被告: 北京米琪貿易有限公司

【事件概要】
1998年3月28日、内蒙古鄂尔多斯资源股份有限公司(以下、オルドス社という)は、第25類服装などの商品で第979531号「鄂尔多斯ERDOS」商標を登録しました。

1999年1月5日、本商標は中国商標局によって「服装」商品上で馳名商標として認定されています。

2015年6月、オルドス社は被告である北京米琪貿易有限公司(以下、米琪社という)が天猫サイト(米琪社のネットショップ)で販売している「カシミア」商品に「鄂尔多斯」の文字を強調して使用していることを発見しました。この商品は正価が50元で、実際の販売単価は20元で、販売量が10,446件でした。

米琪社は訴訟で、販売しているカシミヤ製品について、まず中国各地からカシミヤ材料を購入し、同社が加工し、ラベルを付した後、「天猫」サイトで販売し、利益率は約20%であることを認めました。

オルドス社は米琪社が自社の商標権を侵害していると主張し、直ちに権利侵害を停止し、懲罰的賠償を適用し経済損失32万元を賠償する判決を命じるよう求めました。

【一審裁判所の判断】
被告の行為はオルドス社の商標権を侵害している。
被告は「カシミヤ」製品などの商品の経営者で、係争商標の知名度を知っているべきである。

被告が自社のネットショップで係争商標とほぼ同じ標識を強調して使用し、かつその継続時間が長く、主観的悪意があることは明らかで、権利侵害の情状が深刻であるので、懲罰的賠償を適用して賠償責任を確定すべきである。

—-賠償額の確定方法—-
■権利侵害商品の販売数量、単価及び係争商標の権利侵害商品に対する合理的利益率の三つの積によって権利侵害利得を確定する。
■権利侵害商品の単価について、正価及び割引販売がそれぞれ、権利侵害商品の総販売数の50%を占めていると考え、即ち平均単価を35元とする。
■係争商標の権利侵害利得における作用に基づき、係争商標が権利侵害商品に与えた利益率は25%であると確定した。

考慮された要素:
1.「鄂尔多斯」(ERDOS)シリーズの商標が服装商品において高い知名度を有している点
2.米琪社は、カシミヤ商品を包装し、ラベルを生産する過程で、係争商標とほぼ同じ「鄂尔多斯」標識を包装の顕著な標識として強調して使用していた点
3.米琪社は、運営している天猫のネットショップで権利侵害商品の写真を展示する際にも「鄂尔多斯」の標識を目立つ場所に載せていた点
4.関連公衆は一般的に、天猫は信頼度と商品の品質が保障されていると考えているため、公衆の誤解を招きやすい点

以上により、被告の権利侵害商品の利益率を相対的に高く設定した。

一審は権利侵害利得の2倍となる182 805元を経済損失として被告が賠償すべきであるとしました。

【代表的な事件としての意義】
本件は相対的に正確に懲罰的賠償の基数を確定した代表的な事例です。
懲罰的賠償の基数の確定は懲罰的賠償額を計算する上で重要なポイントとなります。

本件は権利侵害者の権利侵害利得を用いて懲罰的賠償の基数を計算しましたが、権利侵害利得を確定する際には、以下のとおり3つの必要な計算指標があります。

1)権利侵害商品の販売数量
2)権利侵害商品の価格
権利侵害商品に通常価格と割引価格がある場合は、その平均単価を考慮します。
3)権利商標が権利侵害商品の価格に与える利益率、すなわち知的財産権の貢献度

この指標は権利商標及び権利侵害の情状と結び付けて合理的に裁量する必要があります。

本件は、権利商標の知名度、権利侵害標識と権利商標の類似度、権利侵害標識の権利侵害商品における位置、強調して使用されているか否か、権利侵害商品の写真展示における権利侵害標識の位置の顕著さ、権利侵害商品販売店舗の性質、信用性、影響力などの要素を十分に考慮して、権利侵害商品の価格構成における権利商標の割合を確定しました。

本件における懲罰的賠償の基数=販売数量×平均単価×知的財産権貢献度であり、この計算方法及び知的財産権貢献度に対する考慮は、このような事件の審理において参考にできます。

    

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