「評審案件の中止状況の規範」

2023/06/28
2023/07/05

近日、中国商標局より公布された「商標評審案件審査審理業務制度」において、「評審案件の中止状況の規範」が新たに追加されました。この規範では、評審案件における、7つの明確に審理を中止しなければならに状況と3つの案件に応じて中止できる状況が定められています。これまで問題となっていた、拒絶査定不服審判の際の審理中止の承認や、審理の保留について、具体的な規範が示されています。

1.審理中止の原則について
評審案件の審理において、先行権利の確定などが、本審理結果に実質的な影響を及ぼす場合に限り、審理を中止する。その他の評審理由またはその他の権利状態が確定している先行権利が本案件の結論を確定するのに十分である場合、審理を中止してはならない。

2.審理中止の適用について
この規範では、7つの明確に審理を中止しなければならに状況と3つの案件に応じて中止可能な状況が規定されています。中止しなければならない状況には、拒絶査定不服審判、登録不可に関する不服審判、無効審判に汎用的に適用される5つの状況と、登録不可に関する不服審判及び無効審判に適用される1つの状況と、拒絶査定不服審判だけに適用される1つの状況があります。

1)拒絶査定不服審判・登録不可に関する不服審判・無効審判のいずれにも適用される審理を中止しなければならない状況

(一)係争商標または引用商標が登録者名義変更、譲渡手続き中であり、かつ変更、譲渡後に係争商標または引用商標に権利の衝突がなくなる場合。
品源解釈:この内容は、主に関連会社が引用商標を所有しており、変更、譲渡後に係争商標と引用商標が同一名義人のものとなる場合を指します。

(二)引用商標が有効期間を過ぎており、更新手続き中または更新登録追納期間にある場合。

(三)引用商標が登録抹消または出願取り下げのプロセスにある場合
品源解釈:この内容は、引用商標の出願人または権利者が自主的に引用商標を取り下げ、登録抹消する状況を指しています。登録抹消や取り下げが協議に基づき行われたか、または登録抹消や取り下げを行う商標の出願人または権利者が、拒絶査定不服審判、登録不可に関する不服審判、無効審判の請求人本人である状況を指すと考えます。

(四)引用商標が取消された場合、無効宣告された場合、または期間が満了しても更新されなかった場合で、取消、無効宣告又は抹消の日から1年以内の場合。
なお、拒絶理由がか「商標法」第五十条に関するものでない場合、審理を中止する必要はない。
品源解釈: 拒絶査定不服審判において、引用商標の無効に成功したものの、再出願した案件が第五十条に基づき拒絶されていた状況について、今後は審理中止が許可されることとなります。
「商標審査審理指南」に基づき、引用商標が3年連続不使用により取り消された場合は、指南に従って実行する。
※中国『商標法』第五十条の条文※
登録商標が取消された場合、無効宣告された場合、または期間が満了しても更新されなかった場合で、取消、無効宣告又は抹消の日から1年以内の場合、商標局は当該商標と同一又は近似する商標の登録を認めない。

(五)引用商標に関わる事案の結論が出ており、結論が発効するのを待っているまたは発効した判決を執行し再裁決を待っている場合。
品源解釈:これは引用商標が裁定により取り消されたものの、取消公告が出ていない状況を指します。国際登録案件でこのような状況が多く見られます。中国国内の登録商標は、三年不使用取り消しの裁定から3-4ヶ月で取消公告が発行されますが、国際登録商標については、取消公告が掲載されるまでに1-2年かかる場合もありました。以前このような状況では審理が待たれないこともあったため、権利者は追加で訴訟を提起する必要がありました。

2)登録不可に関する不服審判及び無効審判に適用される審理を中止しなければならない状況
登録不可に関する不服審判、無効審判において、現行の「商標法」第三十五条第四款、第四十五条第三款の規定と一致する場合、
即ち、
(六)関連する先行権利が、裁判所で審理中または行政機関で処理中の別の事案の結果にを根拠としなければならない場合。
品源解釈:この内容は、主に評審案件に重大な影響を及ぼす引用商標の権利状態が不確定であり、拒絶査定不服審判、取消手続き中または無効審判手続き中である状況を指します。

3)拒絶査定不服審判だけに適用される審理を中止しなければならない状況
(七)関連する引用商標の権利状態が裁判所で審理中または行政機関で処理中の別の事案の結果を根拠としなければならない場合で、且つ出願人が明確に審理の中止を請求している場合。
品源解釈:この内容は、引用商標が出願人の登録障害となっていて、出願人が引用商標に対して何らかの行動をしており、かつその結果が商標出願の登録に重大な影響を及ぼす場合、審理を保留または中止しなければならないことを明確にしています。

4)審理を中止可能な状況
(八)拒絶査定不服審判に関連する引用商標に対して無効審判が提起されており、かつその引用商標登録者が他の案件において「商標法」第四条、第十九条第四款、第四十四条第一款等の悪意のある登録状況を構成していると認定された場合、審理を中止することができる。
品源解釈:この内容は非常にプラスとなるもので、主に審査官の審理における自由裁量を示しています。出願人の商標権保護に非常に有利となる内容で、拒絶査定不服審判の理由書において、商標の非近似性を主張できるだけでなく、商標の近似性も主張して、引用商標の冒認登録の悪意を列挙することで、審理中止を請求し、引用商標の裁判結果を待つことができます。これにより、出願人自身の合法的権利を効果的に保護でき、重複登録の防止にもつながります。

(九)
同一の事案または関連する事案が先に裁定または判決されるのを待つ必要がある場合、必要に応じて審理を中止することができる。
この状況は必ずしも引用商標に関わるものではないので、出願人が中止申請を提出することを要件とすることも求められないが、行政の各権利付与・権利確認手続き及び行政手続きと司法手続きを連携させるために、審査審理基準を統一し、結論の矛盾による無駄な手続きを避け、当事者の負担を確実に軽減するために、審査官は具体的な事案に基づいて自主的に中止するかどうかを決定することができる。
品源解釈:これは主にシリーズ事案に対するものが多いと思われます。審理の中止は、「同案同裁」の審査原則を体現しており、審査のリソースを大幅に節減し、出願人の権利保護にも役立ちます。

(十)
その他審理を中止することができる状況として、網羅できていない状況に対して、
必要性と合法的権利者に有利であることを原則とし、上記の状況を参照して、審査官は具体的な事案に基づいて中止するかどうかを自主的に決定することができる。

提出時期
拒絶査定不服審判において、申請日から3ヶ月の資料補足提出期間に、書面で引用商標に対して権利障害を取り除く行動をとることを説明する。
品源解釈:本規範には、拒絶査定不服審判に関する提出時期しか規定されていませんが、登録不可に関する不服審判、無効審判においても審理状態に応じて、事件の審理が完了する前に審理中止の申請を提出することができると考えます。

審理中止プロセスの終結
引用商標の権利状態が確定した後、出願人は対応する証拠資料を提出し、審査官は出願人からの補足証拠を受領し、中止状況が解消されたことを確認した後、審理を再開する。

 

出所:https://sbj.cnipa.gov.cn/sbj/ssbj_gzdt/202306/t20230613_27700.html#

    

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