国家知識産権局「専利審査指南」改正の決定について
(2020年2月1日施行)
専利審査指南第2部分第9章第6節に以下の内容を追加する。
6.アルゴリズム的特徴又はビジネスルール及び方法的特徴を含む特許出願の審査に関する規定
人工知能、インターネット+、ビッグデータ及びブロックチェーン等に関する特許出願は、一般的にアルゴリズム又はビジネスルール及び方法等の知的活動の規則及び方法的特徴を含み、本節は、専利法及びその実施細則に基づいて、このような出願の審査の特殊性を規定することを目的とする。
6.1審査基準
審査は、保護を求めようとする解決手段、すなわち、請求の範囲により限定された解決手段に対して行われるべきである。審査において、技術的特徴とアルゴリズム又はビジネスルール及び方法的特徴等を簡単に分割すべきではなく、請求項に記載の全ての内容を一体として、それが関わる技術的手段、解決しようとする技術的問題及び生じる技術的効果を分析すべきである。
6.1.1専利法第25条第1款第(2)項による審査
請求項が抽象的なアルゴリズム又は単純なビジネスルール及び方法に関し、且ついずれの技術的特徴も含まない場合、この請求項は、専利法第25条第1款第(2)項に規定される知的活動の規則及び方法に属し、専利権が付与されるべきではない。例えば、抽象的なアルゴリズムに基づき、且ついずれの技術的特徴も含まない数学モデル構築方法は、専利法第25条第1款第(2)項に規定される専利権が付与されるべきではない場合に属する。また、例えば、ユーザの消費額に応じて利益還元を行う方法であって、その方法に含まれる特徴は、全て利益還元規則に関するビジネスルール及び方法的特徴であり、いずれの技術的特徴も含まない場合、専利法第25条第1款第(2)項に規定される専利権が付与されるべきではない場合に属する。
請求項にアルゴリズム的特徴又はビジネスルール及び方法的特徴に加えて技術的特徴を含み、当該請求項が、全体として知的活動の規則及び方法ではない場合、専利法第25条第1款第(2)項による、専利権を獲得する可能性を排除すべきではない。
6.1.2専利法第2条第2款による審査
保護を求めようとする請求項が、全体として専利法第25条第1款第(2)項に規定された専利権の獲得を排除する場合に属しない場合、専利法第2条第2款に記載される技術案に属するか否かを審査する必要がある。
アルゴリズム的特徴又はビジネスルール及び方法的特徴を含む請求項が、技術案に属す
るか否かを審査する場合、請求項に記載された全ての特徴を全体的に考慮する必要がある。
当該請求項に、解決しようとする技術的問題に対して、自然法則を利用した技術的手段を講じ、且つこれにより自然法則に従った技術的効果が得られると記載されている場合、当該請求項に記載された解決手段は、専利法第2条第2款に記載される技術案に属する。例えば、請求項においてアルゴリズムに係る各ステップが、解決しようとする技術的問題と密接に関連することを示している場合、例えば、アルゴリズムにより処理されるデータが、技術分野において確かな技術的意味を有するデータであり、アルゴリズムの実行が自然規則を用いて、ある技術的問題を解決するプロセスを直接的に示し、且つ技術的効果を取得する場合、当該請求項に記載された解決手段は、一般的に、専利法第2条第2款に記載される技術案に属する。
6.1.3新規性及び進歩性の審査
アルゴリズム的特徴又はビジネスルール及び方法的特徴を含む特許出願に対して新規性を審査する場合、技術的特徴だけなく、アルゴリズム的特徴又はビジネスルール及び方法的特徴も含む請求項に記載された全ての特徴を考慮すべきである。
技術的特徴だけなく、アルゴリズム的特徴又はビジネスルール及び方法的特徴も含む特許出願に対して進歩性を審査する場合、技術的特徴と機能的に相互にサポートし、相互作用関係があるアルゴリズム的特徴又はビジネスルール及び方法的特徴を、技術的特徴と一体として考慮すべきである。「機能的に相互にサポートし、相互作用関係がある」とは、アルゴリズム的特徴又はビジネスルール及び方法的特徴と、技術的特徴とが密接に組み合わさり、技術的問題を解決するための技術的手段を共に構成し、且つ対応する技術的効果が得られることを意味する。
例えば、請求項に記載のアルゴリズムが具体的な技術分野に適用され、具体的な技術的問題を解決できる場合、アルゴリズム的特徴と技術的特徴とは、機能的に相互にサポートし、相互作用関係があると考えられ、当該アルゴリズム的特徴は、採用される技術的手段の構成要素となり、進歩性を審査する際に、前記アルゴリズム的特徴の方案に対する貢献を考慮しなければならない。
また、請求項に記載のビジネスルール及び方法的特徴の実行が技術的手段の調整又は改良を必要とする場合、当該ビジネスルール及び方法的特徴と技術的特徴とは、機能的に相互にサポートし、相互作用関係があると考えられ、進歩性を審査する際に、前記ビジネスルール及び方法的特徴の方案に対する貢献を考慮しなければならない。
6.2審査例
以下、上記審査基準に基づき、アルゴリズム的特徴又はビジネスルール及び方法的特徴を含む特許出願の審査例を示す。
(1)専利法第25条第1款第(2)項の範囲内にある、アルゴリズム的特徴又はビジネスルール及び方法的特徴を含む特許出願は、専利保護の客体に属しない。
[例1]
数学モデルの構築方法
出願内容の概要
本特許出願の解決手段は、トレーニングサンプルの数を増加することで、モデル構築の精度を向上する数学モデルの構築方法である。当該モデル構築方法は、第1の分類作業に関連する他の分類作業のトレーニングサンプルも、第1の分類作業の数学モデルのトレーニングサンプルとすることにより、トレーニングサンプルの数を増加し、更にトレーニングサンプルの特徴値、抽出特徴値、タグ値などを用いて関連する数学モデルをトレーニングし、最終的に第1の分類作業の数学モデルを取得することで、トレーニングサンプルが少ないことによって、過剰フィッティングによるモデル構築の精度が低いという欠点を克服する。
出願の請求項
数学モデルの構築方法であって、
第1の分類作業のトレーニングサンプルにおける特徴値と、前記第1の分類作業に関連する他の分類作業である第2の分類作業のトレーニングサンプルにおける少なくとも1つの特徴値とに基づいて、初期特徴抽出モデルをトレーニングし、目的特徴抽出モデルを取得するステップと、目的特徴抽出モデルに従って、前記第1の分類作業の各トレーニングサンプルにおける特徴値をそれぞれ処理し、各トレーニングサンプルに対応する抽出特徴値を取得するステ ップと、前記各トレーニングサンプルに対応する抽出特徴値とタグ値とを組み合わせて抽出トレ ーニングサンプルを構成し、初期分類モデルをトレーニングして目的分類モデルを取得するステップと、 前記目的分類モデルと前記目的特徴抽出モデルとを組み合わせて第1の分類作業の数学モデルを構成するステップとを含む、ことを特徴とする数学モデルの構築方法。
分析と結論
本解決手段は、いずれの具体的な応用分野にも関するものではなく、処理されたトレーニングサンプルの特徴値、抽出特徴値、タグ値、目的分類モデル及び目的特徴抽出モデルは、全て抽象的な汎用データであり、トレーニングサンプルに関連するデータを用いて数学モデルをトレーニングするような処理プロセスは、一連の抽象的な数学方法のステップであり、最終的に得られた結果も抽象的な汎用分類の数学モデルである。本方案は、抽象的なモデル構築方法であり、その処理対象、プロセス及び結果は、いずれも具体的な応用分野との組み合わせに関与せず、抽象的な数学方法に対する最適化に属し、且つ方案全体にはいずれの技術的特徴も含まれず、本特許出願の解決手段は、専利法第25条第1款第(2)項に規定される知的活動の規則及び方法に属し、専利保護の客体に属しない。
(2)技術的問題を解決するために技術的手段を用いて技術的効果が得られたアルゴリズム的特徴又はビジネスルール及び方法的特徴を含む特許出願は、専利法第2条第2款に規定される技術案に属するため、専利保護の客体に属する。
[例2]
畳み込みニューラルネットワークモデルのトレーニング方法
出願内容の概要
本特許出願の解決案は、各レベルの畳み込み層でトレーニング画像に対して畳み込み演算及び最大プーリング演算を実行した後、更に最大プーリング演算後に得られた特徴画像に対して水平プーリング演算を実行することにより、トレーニングされたCNNモデルが画像カテゴリを識別する時に、任意のサイズの画像を識別できる。
出願の請求項
畳み込みニューラルネットワークCNNモデルのトレーニング方法であって、
トレーニングするCNNモデルの初期モデルパラメータを取得し、前記初期モデルパラメータは、各レベルの畳み込み層の初期畳み込みカーネル、前記各レベルの畳み込み層の初期オフセットマトリックス、全接続層の初期重みマトリックス及び前記全接続層の初期オフセットベクトルを含むステップと、複数のトレーニング画像を取得するステップと、前記各レベルの畳み込み層で前記各レベルの畳み込み層の初期畳み込みカーネルと初期オフセットマトリックスを用いて、各トレーニング画像に対して畳み込み演算と最大プーリング演算を実行し、各レベルの畳み込み層での各トレーニング画像の第1の特徴画像を得るステップと、畳み込み層の少なくとも1つのレベルでの各トレーニング画像の第1の特徴画像に対して、水平プーリング操作を実行し、各レベルの畳み込み層での各トレーニング画像の第2の特徴画像を得るステップと、 各レベルの畳み込み層での各トレーニング画像の第2の特徴画像に従って、各トレーニング画像の特徴ベクトルを決定するステップと、前記初期重みマトリックスと初期オフセットマトリックスに従って、各特徴ベクトルを処理し、各トレーニング画像のカテゴリ確率ベクトルを得るステップと、前記各トレーニング画像のカテゴリ確率ベクトルと各トレーニング画像の初期カテゴリに従って、カテゴリ誤差を計算するステップと、前記カテゴリ誤差に基づいて、前記トレーニングするCNNモデルのモデルパラメータを調整するステップと、繰り返し回数が予め設定された回数に達するまで、調整されたモデルパラメータと前記複数のトレーニング画像に基づいて、モデルパラメータの調整プロセスを継続するステップと、繰り返し回数が予め設定された回数に達した時に得らされたモデルパラメータを、トレ ーニングされたCNNモデルのモデルパラメータとするステップとを含む、ことを特徴とする畳み込みニューラルネットワークCNNモデルのトレーニング方法。
分析と結論
本解決手段は、畳み込みニューラルネットワークCNNモデルのトレーニング方法であり、モデルのトレーニング方法の各ステップで処理されるデータがいずれも画像データであることと、各ステップでどのように画像データを処理するかを明確にしており、ニューラルネットワークトレーニングのアルゴリズムと画像情報処理とが、密接に関連することを示している。本解決手段が解決するのは、CNNモデルが固定サイズを有する画像しか識別できない技術的問題を克服する方法であり、本解決手段は、異なる畳み込み層で画像に対して異なる処理及びトレーニングを実行する手段を採用し、自然法則に従った技術的手段を用いて、トレーニングされたCNNモデルが、任意のサイズの識別画像を識別できる技術的効果を取得した。したがって、本特許出願の解決手段は、専利法第2条第2項に規定される技術案に属し、専利保護の客体に属する。
[例3]
シェア自転車の使用方法
出願内容の概要
本特許出願は、ユーザ端末機器の位置情報および対応する一定の距離範囲内のシェア自転車の状態情報を取得することにより、ユーザがシェア自転車の状態情報に基づいてサイクリング可能なシェア自転車を的確に見つけてサイクリングを行い、リマインダによって駐輪をガイドすることができるシェア自転車の使用方法を開示しており、当該方法は、レンタルシェア自転車の使用および管理を便利にし、ユーザの時間を節約し、ユーザエクスペリエンスを向上させることができる。
出願の請求項
ユーザが、端末機器によりサーバへシェア自転車の使用要求を送信するステップ1と、サーバが、ユーザの第1の位置情報を取得し、前記第1の位置情報に対応する一定の距離範囲内のシェア自転車の第2の位置情報、およびそれらのシェア自転車の状態情報をサ ーチし、前記シェア自転車の第2の位置情報及び状態情報を端末機器に送信し、第1の位置情報および第2の位置情報が、GPS信号により取得されるステップ2と、ユーザが、端末機器に表示されたシェア自転車の位置情報に基づき、サイクリング可能なターゲットシェア自転車を見つけるステップ3と、 ユーザが、端末機器によりターゲットシェア自転車本体における2次元バーコードをスキ ャンし、サーバ認証後、ターゲットシェア自転車の使用権を得るステップ4と、
サ ーバがサイクリングの情況に基づき、ユーザへ駐輪リマインダをプッシュし、ユーザが自転車を所定領域に駐輪すれば、優遇料金表を用いて課金し、そうでなければ、標準料金表を用いて課金するステップ5と、ユーザが前記リマインダに基づいて選択を行い、サイクリング終了後、ユーザがシェア自転車のロック動作を行い、シェア自転車のロック状態を検出した後にサーバへサイクリング完了信号を送信するステップ6と、を含む、ことを特徴とするシェア自転車の使用方法。
分析と結論
当該解決手段は、シェア自転車の使用方法に関し、シェア自転車の位置をマッチングさせてシェア自転車の使用権を取得するという技術的問題を解決する如何にして正確にシェア自転車の乗車可能位置を見つけシェア自転車を作動するかという技術的問題を解決する。当該技術案は、端末機器およびサーバにおけるコンピュータープログラムを実行することにより、ユーザのシェア自転車を使用する動作に対する制御及びガイドを実現し、位置情報、認証などのデータの採集および計算に対する制御を反映し、自然法則に従った技術的手段を利用し、シェア自転車の位置をマッチングさせてシェア自転車の使用権を取得するなどの技術的効果を実現しているシェア自転車の乗車可能位置を正確に見つけシェア自転車を作動する等の技術的効果を実現している。そのため、当該特許の解決手段は、専利法第2条第2項に規定する技術案に属し、専利保護の客体に属する。
[例4]
ブロックチェーンノード同士の通信方法および装置
出願内容の概要
本特許出願は、ブロックチェーンノードの通信方法および装置を提供する。ブロックチェーンにおけるトラフィックノードは、通信接続を確立する前に、通信リクエストに運ばれたCA証明書および予め配置されたCA信頼リストに基づき、通信接続を確立したか否かを確定することで、トラフィックノードがプライバシーデータを漏えいする可能性を低減させ、ブロックチェーンにおいてデータを記憶する安全性を向上させることができる。
出願の請求項
【請求項1】ブロックチェーンネットワークにおけるブロックチェーンノードにはトラフィックノードが含まれるブロックチェーンノードの通信方法であって、前記トラフィックノードは、証明書ライセンスセンターCAから送信される証明書を記憶し、CA信頼リストが予め配置され、前記方法は、第1のブロックチェーンノードが、第2のブロックチェーンノードから送信された通信リクエストを受信し、前記通信リクエストには、第2のブロックチェーンノードの第2の証明書が運ばれていることと、
前記第2の証明書に対応するCAアイデンティティを確定することと、確定された前記第2の証明書に対応するCAアイデンティティが前記CA信頼リストに存在したか否かを判断し、YESであれば、前記第2のブロックチェーンノードと通信接続を確立しNOであれば、前記第2のブロックチェーンノードと通信接続を確立しないことと、を含む、ブロックチェーンノードの通信方法。
分析および結論
本願が解決しようとする問題は、アライアンスチェーンネットワークにおいて、如何にしてブロックチェーントラフィックノードがユーザのプライバシーデータの漏えいを防止するかであり、ブロックチェーンにおけるデータの安全性を向上させるという技術的問題に属する。し、通信リクエストにCA証明書を携帯し、CA信頼リストが予め配置されるように接続を確立するか否かを確定することにより、トラフィックノードの接続確立可能な対象を制限することで、ブロックチェーンにおけるデータの安全性を向上させることができる。そのため、本願におけるブロックチェーンノード同士の通信方法は、トラフィックノード同士のセキュリティ通信を実現し、トラフィックノードがプライバシーデータを漏えいする可能性を低減させるので、し、自然法則に従った技術的手段を用いて、トラフ ィックノード間の安全な通信とトラフィックノードがプライバシーデータを漏えいする可能性を低減させるという技術的効果が得た。そのため、当該特許出願の解決手段は専利法第二条第二款に規定される技術案に属し、専利保護の客体に属する。
(3)技術的問題が解決されておらず、或いは技術的手段が利用されておらず、或いは技術的効果が取得されていない、アルゴリズム特徴またはビジネスルール及び方法的特徴を含む特許は、専利法第2条第2項に規定する技術案に属しないため、専利保護の客体に属しない。
【例5】
消費利益還元方法
出願内容の概要
本特許出願は、コンピュータにより設定された利益還元方法を実行して消費者に現金クーポンを与えることにより、ユーザの消費意図を向上させ、事業者がより多くの利益を取得することができる消費利益還元方法を提供する。
出願の請求項
ユーザが店舗で消費する際に、事業者が消費した金額に基づいて一定の現金クーポンを返還し、具体的には、事業者が、コンピュータでユーザの消費金額を計算し、ユーザの消費金額RをMの区間に区画し、そのうち、Mは、整数であり、区間1から区間Mまでの値は小さい順に排列され、返還する現金クーポンの金額FもMの値に区画し、Mの値も小さい順に排列され、
コンピュータからの計算値に基づき、今回のユーザの消費金額が区間1にある場合、利益還元額は1番目の値であり、今回のユーザの消費金額が区間2にある場合、利益還元額は2番目の値であることを判断し、以後同様に対応する区間における利益還元額をユーザへ返還するステップと、を含む、ことを特徴とする消費利益還元方法。
分析と結論
当該解決手段は、コンピュータにより実行される消費利益還元方法に関し、当該方法はコンピュータにより実行され、ユーザの消費データを処理対象とし、解決するのはどのようにユーザの消費を促進するかという問題であり、技術的問題を構成していない。用いられた手段は、コンピュータにより、人為的に設定された利益還元規則を実行するものであるが、コンピュータに対する限定は、所定のルールに応じてユーザの消費金額に基づいて利益還元額を確定するだけであり、自然法則の制約を受けていないため、技術的手段を利用していない。当該方案による効果は、ユーザの消費を促進するためのものに過ぎず、自然法則に従った技術的効果ではない。そのため、当該特許は、専利法第2条第2項に規定する技術案に属しないため、専利保護の客体に属しない。
[例6]
電気使用量の特徴に基づく経済景気指数の分析方法
出願内容の概要
本発明は、それぞれの経済指標および電気使用量指標を統計することにより、検出待ちの地域における経済景気指数を評価する。
出願の請求項
地域における電気使用量の特徴に基づく経済景気指数の分析方法であって、
検出待ちの地域における経済データおよび電気使用量データに基づき、検出待ちの地域における経済景気指数の、経済指標および電気使用量の指標を含む初期指標を選定するステ ップと、コ ンピュータが実行するクラスタ分析方法および時差関連分析法により、前記検出待ちの地域における、先行指標、一致指標および停滞指標を含む経済景気指標体系を確定するステップと、前記検出待ちの地域における経済景気指標体系に基づき、合成指数計算方法を用いて、前記検出待ちの地域における経済景気指数を取得するステップと、を含むことを特徴とする分析方法。
分析と結論
当該解決手段は、経済景気指数の分析および計算方法であり、当該方法はコンピュータにより実行され、各種の経済指標および電気使用量の指標を処理対象とし、解決しようとする問題は、経済傾向により判断するため、技術的問題を構成していない。用いられた手段は、経済データおよび電気使用量データに基づいて経済情況を分析することであり、経済的法則に応じて経済管理手段を用いるだけであり、自然法則の制約を受けていないため、技術的手段を利用していない。当該方案が最終的に経済評価のための経済景気指数を取得することができることは、自然法則に従った技術的効果ではない。そのため、当該解決手段は、専利法第2条第2項に規定する技術案に属しないため、専利保護の客体に属しない。
(4)進歩性の審査を行う際、技術的特徴と機能的に相互にサポートし相互作用関係が存在するアルゴリズム特徴またはビジネスルールおよび方法的特徴の方案に対する貢献を考慮すべきである。
[例7]
マルチセンサー情報に基づくヒューマノイドロボットの転倒状態の検出方法
出願内容の概要
従来、ヒューマノイドロボットの歩行時の転倒状態に対する判定としては、主に、姿勢情報またはZMP点位置情報を利用するが、このような判断は全面的ではない。本特許出願は、マルチセンサーに基づいてヒューマノイドロボットの転倒状態を検出する方法を提供し、ロボットの歩行段階情報、姿勢情報およびZMP点位置情報を結び付け、ファジー決定システムを用いて、ロボットの現在の安定性と制御可能性を判定し、ロボットの次の動作に対する参考を提供することができる。
出願の請求項
マルチセンサー情報に基づくヒューマノイドロボットの転倒状態の検出方法であって、
①姿勢センサー情報、ゼロモーメント店ZMPセンサー情報およびロボットの歩行段階情報を結び付けることにより、分層構造のセンサー情報結合モデルを確立するで、ヒ ューマノイドロボットの安定性の判定を実現するステップと、
②具体的には、
- ロボットの支持脚と地面との間の接触情況、およびオフライン歩振り計画に基づき、ロ ボットの歩行段階を確定するステップ、
- ファジー推論アルゴリズムを用いてZMP点位置情報に対してファジー化を行うステップ、
- ファジー推論アルゴリズムを用いてロボットのピッチ角または転がり角に対してファジー化を行うステップ
- 出力メンバーシップ関数を確定するステップ、
- ステップ①からステップ④に基づいてファジー推論ルールを確定するステップ、および
- 非ファジー化を行うステップ、を有する、それぞれ前後ファジー決定システムおよび左右ファジー決定システムを用いてロボットの前後方向および左右方向における安定性を判定するステップと、を含むことを特徴とする検出方法。
分析と結論
引例1は、ヒューマノイドロボットの歩振り計画およびセンサー情報に基づくフィードバック制御を開示しており、関連結合情報に基づいてロボットの安定性を判断し、複数のセンサー情報に基づいてヒューマノイドロボットの安定状態の評価を行うことを含み、すなわち、引例1は、本発明の解決手段におけるステップ(1)を開示している。当該解決手段と引例1との区別は、ステップ(2)における具体的なアルゴリズムであるファジー決定方法を用いることにある。
出願書類から分かるように、当該解決手段は、ロボットの安定状態、およびその転倒可能方向に対する判定の信頼性と正確率を効果的に向上させる。姿勢情報、ZMP点位置情報および歩行段階情報を入力パラメータとして、ファジーアルゴリズムによって、的確な姿勢調整コマンドをさらに送信するための根拠を提供するために、ヒューマノイドロボットの安定状態を判定するための情報を出力する。そのため、上記アルゴリズム特徴と技術的特徴とは、機能的に相互にサポートするため、相互作用関係が存在する。引例1に対して、発明が実際に解決しようとする技術的問題は、どのようにロボットの安定状態を判断するか、およびどのようにその転倒可能方向を的確に予測するかである。上記ファジー決定を実現するアルゴリズム、およびロボットの安定状態に適用される判断は、いずれも他の引例に開示されておらず、当該分野の公知常識にも属しない。従来技術全体的においても、当業者が引例1を改良して発明の保護を求める示唆が存在しないため、保護を求める発明技術案は、最も類似する従来技術に対して自明ではなく、進歩性を有している。
[例8]
協調的共進化及び多集団遺伝的アルゴリズムに基づくマルチロボットの経路計画システム
出願内容の概要
既存のマルチ移動ロボットの運動計画制御構造は、一般的に集中型計画方法を採用し、この方法は、マルチロボットシステムを複数の自由度を有する複雑なロボットと見なし、システム内の計画器によってすべてのロボットの運動計画を統一的に完成するが、その欠点は、計算時間が長く、実用性が悪いことである。本特許出願は、協調的共進化及び多集団遺伝的アルゴリズムに基づくマルチロボットの経路計画システムを提供する。ロボットの各経路は、1つの染色体で表され、最短距離、平滑度、安全距離を経路適応度関数を設計するための3つの目的とし、Messy遺伝的アルゴリズムで各ロボットの経路を最適化して最適な経路を取得する。
出願の請求項
(1)ロボットの各経路は、1つの染色体で表され、染色体は、ノードのリンク形式で表され、即ち、[(x,y),time]、(x,y,time∈R)で表され、(x,y)は、ロボットの位置座標を表し、timeは、前のノードから本ノードまでの移動に必要な時間消費を表し、スタートノードのtimeは0に等しく、各ロボット個体の染色体は、初期ノードの初期位置、エンドノードの目的位置が固定されていることを除いて、中間ノードとノード数は可変であり、
(2)各ロボットRobot(i)の経路path(j)の適応度関数は、φ(pi,j)で表され、||pi,j||=Distance(pi,j)+ws×smooth(pi,j)+wt×Time(pi,j)ここで、||pi,j||は距離、平滑度及び時間消費の線形結合であり、wsは平滑重み係数であり、wtは時間重み係数であり、Distance(pi,j)は、経路の長さを表し、smooth(pi,j)は、経路の平滑度を表し、Time(pi,j)は、経路pi、jの時間消費であり、各ロボットは、前記適応度関数を用いて、Messy遺伝的アルゴリズムの最適化によって最適な経路を取得することを特徴とする、 協調的共進化及び多集団遺伝的アルゴリズムに基づくマルチロボットの経路計画システム。
分析と結論
引用文献1は、協調的共進化に基づくマルチロボット経路計画方法を開示しており、適応度関数を用いて、カオス遺伝的アルゴリズムによりを採用して最適な経路を取得する。特許出願の解決手段と引用文献1の違いは、マルチロボットの経路計画がMessy遺伝的アルゴリズムによって実現されていることである。
この解決手段では、適応度関数を用いてMessy遺伝的アルゴリズムを制約し、Messy遺伝的アルゴリズムを用いて最適化を経てロボットの前進経路を取得し、この解決手段のアルゴリズム的特徴と技術的特徴は機能的に相互にサポートし、相互作用関係を有し、ロボットの前進経路の最適化を実現する。引用文献1について、本発明によって実際に解決される技術的問題は、どのようにして特定のアルゴリズムに基づいてロボットを最適な経路で前進させるかであると判断される。引用文献2は、前記カオス遺伝的アルゴリズムを含む様々な遺伝的アルゴリズムを経路最適化に使用できることを開示しており、Messy遺伝的アルゴリズムを同時に用いて、他のアルゴリズムの欠点を解決し、より合理的な最適化結果を得ることができる。引用文献2からの啓発に基づいて、当業者は、特許出願の技術的解決手段を得るために引用文献1を引用文献2と組み合わせる動機がある。したがって、保護を求める発明技術案は、引用文献1と引用文献2の組み合わせに対して自明であり、進歩性がない。
[例9]
物流配送方法
出願内容の概要
荷物の配送過程で、どのようにして荷物の配送效率を効率的に高めるか、及び配送コストを下げるかは、特許出願が解決すべき問題である。物流担当者が配送先に到着した後、サーバを介して、発注者端末にメッセージをプッシュすることにより、特定の配送エリアの複数の発注者に荷物の受け取りを通知して、荷物の配送效率の向上及び配送コストの低減を図ることができる。
出願の請求項
ユーザに荷物の受け取りを一括通知することで、物流配送效率を向上させる物流配送方法であって、前記方法は、配達員がユーザに荷物の受け取りを通知する必要がある場合、配達員が、荷物が到着したという通知を手元の物流端末を介してサーバに送信することと、 サーバが、配達範囲内のすべての発注者に一括通知することと、通知を受信した発注者が、通知情報に基づいて荷物を受け取ることと、を含み、サーバが一括通知を行う具体的な実現方式は、サーバが、物流端末から送信された入荷通知に携帯する配達員ID、物流端末の現在位置、及び対応する配送範囲に応じて、当該配達員IDに対応する、前記物流端末の現在位置を中心とした配送距離範囲内のすべての目標注文情報を確定し、通知情報をすべての目標注文情報のうちの発注者アカウントに対応する発注者端末にプッシュする、 物流配送方法。
分析と結論
引用文献1には、物流端末が、配送伝票におけるバーコードをスキャンし、スキャン情報をサーバに送信し、荷物が既に到着したことをサーバに通知することと、サーバがスキ ャン情報における発注者情報を取得し、当該発注者に通知することと、通知を受信した発注者が、通知情報に基づいて荷物を受け取ることと、を含む物流配送方法が開示されている。
特許出願の解決手段と引用文献1との違いは、荷物が到着したことをユーザに一括通知することであり、一括通知を実現するために、技術案のサーバと、物流端末及びユーザ端末との間の物理構造データ構造及びデータ通信方法が相応に調整され、入荷通知ルール及び具体的な一括通知の実現方式は、機能的に相互にサポートされるため、相互作用関係を有する。本発明によって実際に解決される技術的問題は、どのようにして注文到着通知の效率を高め、荷物の配送效率を高めるかであると判断される。ユーザの観点から見ると、ユーザは、注文到着状況の情報をより早く知ることができ、ユーザエクスペリエンスも向上する。従来技術には、上記引用文献1を改良して特許出願の解決手段を得る技術的示唆が存在しないため、この解決手段は、進歩性を有する。
[例10]
動的な観点進化の可視化方法
出願内容の概要
近年、人々は社交的なプラットフォームを介して意見と考えを発表する傾向があり、人々が社交的なプラットフォームに発表した感情的な内容は、人々の観点の進化を反映し、これにより、事件の発展、変化及び傾向を見ることができる。本特許出願は、社交的なプラ ットフォームにおいて人々が発表した情報を自動的に収集し、その中の感情を分析することで、コンピュータを使用して感情の可視化図を描く、人々が異なる時間における感情の強さの変化と時間とともに変化する傾向をより理解することを助ける。
出願の請求項
ステップ1)一、コンピューティング装置は、収集された情報セットにおける情報の感情的メンバーシップ及び感情分類を確定し、前記情報の感情的メンバーシップは、該情報がどのくらいの確率である感情分類に属するかを示すことと、
ステップ2)二、前記感情分類は、積極的、中立的又は消極的であり、具体的な分類方法は、「好き」の数pを「嫌い」の数qで割った値rが閾値aより大きい場合、この感情は積極的とみなされ、値rが閾値bより小さい場合、この感情は消極的とみなされ、値rがb≤r≤aを満たす場合、この感情は中立的とみなされ、a>bを満たすことと、
ステップ3)三、前記情報の感情分類に基づいて、前記情報セットの情感可視化図形の幾何レイアウトを自動的に確立し、横軸に情報が発生する時間を、縦軸に各感情分類に属する情報の数を表すことと、
ステップ4)四、前記コンピューティング装置が、前記情報の感情的メンバーシップに基づいて、確立された幾何レイアウトを着色し、情報色の段階的な順序に従って各感情分類層における情報を着色することと、を含む、動的な観点進化的可視化方法。
分析と結論
引用文献1には、時間が水平軸として表され、異なる時間での各色バンドの幅は各情感の時間での測定を表し、異なる色バンドで異なる感情を表す、情感に基づく可視化分析方法が開示されている。
本特許出願の解決手段と引用文献1との違いは、ステップ2)二で設定された情感の具体的な分類ルールである。出願の内容から分かるように、感情分類ルールが異なっていても、対応するデータを着色処理する技術的手段は同様であり、変更する必要はない、即ち、上記の感情分類ルールと具体的な可視化手段は、機能的に相互にサポートせず、相互作用関係を持たない。引用文献1と比較して、本特許出願は、新しい感情分類のルールを提供しただけで、実際にはいずれの技術的問題も解決しておらず、従来技術に対する技術的貢献もしていない。したがって、保護を求める発明技術案は、引用文献1に対して進歩性を有しない。
6.3 明細書及び特許請求の範囲の作成
6.3.1 明細書の作成
アルゴリズムの特徴又はビジネスルール及び方法的特徴を含む特許出願の明細書は、発明がその技術的問題を解決するために採用した解決手段を明確かつ完全に記述しなければならない。前記解決手段は、技術的特徴を含むことに加えて、技術的特徴と機能的に相互にサポートし、相互作用関係を有するアルゴリズムの特徴又はビジネスルール及び方法的特徴をさらに含むことができる。
明細書には、技術的特徴及びその機能的に相互にサポートし、相互作用関係を有するアルゴリズムの特徴又はビジネスルール及び方法的特徴が、どのように作用し、有益な効果を生むかを明記しなければならない。例えば、アルゴリズムの特徴を含む場合、抽象的なアルゴリズムを具体的な技術分野と結合し、少なくとも1つの入力パラメータ及び関連出力結果の定義を技術分野の具体的なデータと対応させなければならない。ビジネスルール及び方法的特徴が、当業者が明細書に記載された内容で本発明の解決手段を実現できるように、技術的問題を解決するプロセス全体を詳細に記述し、説明しなければならない。
明細書には、発明が従来技術と比較して持っている、例えば、品質、精度又は效率の向上、システム内部の性能の改善などの有益な効果を明確、客観的に明記しなければならない。ユーザの観点からいえば、客観的にユーザエクスペリエンスを向上させることを、明細書で説明してもよい。この場合、このようなユーザエクスペリエンスの向上が、発明を構成する技術的特徴、及びその機能的な相互サポート、相互作用関係を有するアルゴリズムの特徴又はビジネスルール及び方法的特徴によって、どのようにもたらされたのかを同時に説明しなければならない。
6.3.2 特許請求の範囲の作成
アルゴリズムの特徴又はビジネスルール及び方法的特徴を含む特許出願の請求項は、明細書に基づいて、特許の保護を求める範囲を明確かつ簡単に限定しなければならない。請求項には、技術的特徴及びその技術的特徴と機能的に相互にサポートし、相互作用関係を有するアルゴリズムの特徴又はビジネスルール及び方法的特徴を記載しなければならない。