中国で商標を登録出願する際は、マドプロ出願か、直接出願かのいずれかを選択することができます。マドプロと直接出願のどちらを選択すべきか? またその理由は?・・・ これは、多くの外国出願人からよく聞かれる質問です。以下の表にて、出願過程におけるそれぞれの考えられるメリット、デメリットを比較してみましたので、出願の判断をする際の参考にしていただければと思います。
| マドプロ出願 | 直接出願 |
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メリット | 1)低コストの可能性 直接出願(電子出願)の場合、一商標一区分の官庁費用がCNY270 (JPY約13500)であり、指定商品または役務の数が10個を超えると、官庁費用が追加でCNY27(JPY約1350)/個かかります。ただし、マドプロ出願の場合は、指定商品または役務がいくつあっても、追加費用は発生しません。2)商品または役務名称の自由な指定 直接出願の場合、中国知識産権局の定める商品/役務の規範名称に当てはめる必要がありますが、マドプロ出願を通しての商品/役務名称の指定について、中国知識産権局はそこまで厳格ではありません。新しい商品/役務など、適切な商品/役務の規範名称が見つからない場合は、マドプロ出願を選択するほうがよいかもしれません。 3)管理が便利 オフィスアクションが発生しない限り、中国を含む複数の国を一元管理でき、権利者の資源や時間を節約することができます。 | 1)出願が柔軟である 基礎出願/登録が必要ありません。2)リスクが比較的少ない 出願人は、出願前に関連区分において中国で同一または類似の商標があるか否かを調査することができます。 3)権利行使に便利 中国知識産権局から正式な登録証が発行されるため権利行使の際に便利です。 4)権利が安定している 中国の関連法律で保護されるため、権利が比較的安定しています。 5)広範な保護が可能 中国は類似群コード制度を採用しているので、対応する類似群コードをカバーすることで、広範な保護が可能です。 6)審査期間が短い 現在の審査状況によると、商標の直接出願における平均審査期間は4ヶ月です(3ヶ月の公告期間は含まれません)。 |
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デメリット | 1)広範な保護には貢献しない マドプロ出願の商品・役務の範囲は、基礎出願/登録国で指定されている商品・役務の範囲内となります。2)登録証を自動的に入手できない 中国知識産権局は直接出願に対しては中国の登録証を発行しますが、マドプロ出願に対しては発行しません。この登録証は商標権の権利行使や、オンラインまたはオフラインで店舗を開設するなど現地で事業を行うために必要となることが多いですが、証明書の申請に追加のリソースを費やす必要があります。 3)商標権が安定していない マドプロ登録から5年以内に、基礎出願/登録が拒絶または無効宣告された場合、マドプロ登録自体が失効します。 4)出願後の追跡が難しい マドプロ出願が中国において拒絶または異議申立された場合、中国知識産権局はWIPOに通知するのみですが、具体的な対応は中国会社が行う必要があります。 中国の第三者がマドプロ登録の無効または不使用取消を申し立てた場合、中国知識産権局は商標登録者に直接通知しますが、具体的な対応は中国会社が行う必要があります。 5)翻訳および/または保護範囲が正確でない可能性がある 中国は、保護範囲を定義するための独自の商品・役務分類及び類似群コードシステムを採用しています。マドプロ出願では中国知識産権局によって翻訳および分類される必要があります。正確でない分類および/または翻訳が生じた場合、権利行使に問題が生じる可能性があります。したがって、分類と翻訳を再確認し、必要に応じて修正を要求することを推奨します。 6)登録までに時間がかかる可能性がある マドプロ出願では、拒絶または異議がない場合も、少なくともマドリッド協定/議定書に基づく12ヶ月または18ヶ月の審査期間が終了するまで登録されませんが、直接出願では、スムーズな場合約7ヶ月で登録でき権利行使ができます。 | 1)費用が相対的に高い 一度に多くの区分で出願をする場合、直接出願では、費用がマドプロ中国指定出願の倍以上かかります。2)商品/役務に対する審査基準が厳格である 直接出願の指定商品/役務の表記は非常に厳しく、ニース分類の標準リストと中国知識産権局が定期的(通常は3ヶ月に1回)に発行および更新する「非標準であるが許容可能な項目リスト」にある商品または役務を優先することが好まれます。この2つのリストにない名称が許容される可能性もありますが、中国知識産権局に認めてもらうのは容易ではありません。 |
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上記の比較に基づくと、マドプロ出願は費用と管理の面ではメリットがありますが、権利行使の面ではデメリットが多いです。商品や役務の選定において、ニース分類または中国知識産権利局が発行および更新する非標準だが許容される項目リストに適切なものが見つからない場合、または商標出願において多数の区分を指定したい場合は、マドプロ出願が適切な選択肢となる可能性がありますが、それ以外の場合は、より迅速で、より適切に執行される直接出願を選択することを推奨します。